極端に言ってしまえば、トイレットペーパーの芯(注)を物凄くちゃんと加工したものが、卒業証書入れになるといって良いかもしれない。蓋を開けた時に見える白い部分がちょっぴりそれっぽい感じなのもその名残だと言えよう。
だが、近年では卒業証書を入れる筒にプラスチックを使うところも多くなってきている。軽く丈夫で湿気に強いところを評価してのことのようだ。卒業式当日に雨が降る時などがあるので、保護者の間ではプラスチック製の方が嬉しいと言う意見も強い。
実際に手に取ってみたところ、例の「ポン!」という音に関しては若干紙製のものより落ちるが、これはこれで味わい深さがあった。今後、プラスチック製の丸筒はこの圧倒的なシェアをどう覆していくのであろうか?
なお、価格に関しては外部の加工の仕方にもよるが、紙とプラスチックの間に大きな差はないと言われている。
注:トイレットペーパーの芯もちゃんと加工されたものです。
柄は重厚なワニ皮柄、シンプルな単色、中には和紙を張った可愛らしいものも
丸筒というと、すぐに思い浮かべるのがワニ革柄であるが、当然本物のワニ革は使われていない。そんなことをしたら、公立校の予算はそれだけで、えらいことになってしまうだろう。正しく表現するならば、アレはワニ革柄模様の紙である。
しかしながら、これは少ない予算で高級感を出すという点においては、ほぼ完璧な処理をしたと言えるのではなかろうか。いまだに丸筒の柄として廃れていないのも、なるほどと頷けるところがある。
他の柄としては、シンプルな黒や茶といった単色の物がワニ柄に続いている状況だ。紙製のものもあるが、どちらかと言えば、先述したプラスチック製の丸筒に多く見られる柄である。幼稚園、保育園などでは、水色やピンク色の単色の丸筒が良く使われており、こちらはかなり昔の頃から使われている印象だ。
また、一部の丸筒に力を入れている(たぶん)学校などでは、美しい和紙があしらわれた柄のものも確認されている。こちらは女性らしい柔らかな印象のデザインとなっており、女子高校、女子大学などウケそうな作りになっている。
他の柄と比べるとお値段は少々張りそうだが、変に女子に媚びてブランド物の筒を作るぐらいなら、日本人らしく和紙で勝負したいとでも言いたげなところがなかなか憎い。卒業証書を取り巻く丸筒業界で、こうした新しい取り組みがすでに始まっているというのも、知っておいて損はないかもしれない。
卒業証書のサイズに応じた幅広いラインナップ
最後に忘れてはならないのが卒業証書のサイズの問題である。卒業証書のサイズには文部科学省が定める規定のサイズがあるわけではない。そのため、各学校の様々なサイズ需要に答えるために、丸筒にもそれに応じたラインナップが用意されている。
おそらくは卒業証書ではなく、設計図用に作られたものであろうが、中にはA0サイズ(縦841 × 横1189 ミリ)を収納できる筒もある。
また、丸筒のサイズに関してもっとも気を付けなければならないのが収納口の半径についてだ。こちらにもサイズがあることを覚えて置くとよいだろう。半径があまりに小さいと紙が厚い場合、折れ目が付きやすくなってしまうことに繋がり、逆に大きすぎると、取り出す際に紙を強く握り過ぎて、皺を作る原因になる。
その点を考慮すると、丸筒選びの際に卒業証書を貰う側が渡す側に最優先事項として提案すべきなのは、実際はこのサイズの話についてになるのかもしれない。丸筒も丸筒で大事なものではあるが、一番大事にしたいのはどう考えてもその中身の方だからだ。
大切な思い出が集約されたものだからこそ、折り目を付けずに綺麗な状態で保管しておきたい。できれば、美しい箱に入っているとありがたい。
そうした願いが集約された結晶がこの丸筒という道具なのである。
学校を卒業しても、人生は一生勉強。
卒業の日に手に取ったあの丸筒は、次に何かを卒業するその日まで、きっと私達を見守り続けているだろう。