動物園
臭い。でも言えない。動物じゃなくて、隣で一緒に歩いている奴が臭いのかもしれない。そんな葛藤のスポットである。クマもライオンも猿も見せてくれるのはお尻だけ。純粋に動物のお尻だけを見に行く場所。突如として会話のメインを占めることになる「歩き過ぎて足が疲れちゃった話」。休憩がてらに野外で食事を取れば、カラスに食料を奪われることもあるこのサバンナで返せる言葉は、「よし、帰ろう…」ただ一つである。
遊園地
永遠に思える待ち時間……会話のネタがなさ過ぎて、親戚の叔父さんまで話に登場する修行スポット。やっと乗り物に乗れたと思って調子に乗れば、コーヒーカップを回し過ぎて、「気持ち悪い」のおまけつき。なぜ人は高い金を払ってまで苦行を求めるのか?繰り返されるのはデート相手との会話ではなく、この難題に対する自問自答である。
公園
果たして何を見れば良いのか?この時間を一体どう過ごせば良いのか?そんな精神的なサバイバル力が求められるスポットである。自然綺麗。お花綺麗。そして時間を潰しに潰し、疲れ果てて気が付いた頃には共にお空綺麗状態。その現実逃避の先に待っているのは、「退屈な時間を過ごした」という紛れもない現実だ。
展望台
わざわざ高いところに上ってまで今日の天気の話をしにいくスポット。また、休日に遅くまでビル内で残業している人を、上から目線で愛でることが可能な非常にサディスティックな地でもある。この地で繰り広げられている会話のほとんどは、エレベーターに乗る前から分かっていたはずの「もう少し晴れてればよかったね」。アホなこと言ってないで残業手伝ってやれよ。
【夜景を見るデートの不思議】
美しい夜景見学に耐えられる時間は人によって異なる。短い人だと2~3分ぐらい、頑張れる人だと30分から1時間ぐらいと言われているが、その後の会話の盛り上がりは初見の「きれ~い!」以降、下降の一途を辿るのが普通だ。
美術館
何を話して良いか分からなくなってしまう混乱の地。もし、それが初デートで気心も絵心も知れない二人が行ったとすれば、生まれるのは恋愛感情ではなくゴッホとゴーギャン並みの確執(※)である。「俺(私)はこの絵が結構好き」で全ての会話を成立させなければならないこの過酷な地は、時に時間の概念が喪失する。無論悪い意味で。
※異説あり
プラネタリウム
天井に散りばめられた明かりを見上げる作業をする場所。これは極端に言えば、自宅のワンルームの電球を眺めて、ワァ素敵と言っているのと同じこと。また、小学校時代の課外学習で耳にタコが出来るほど聞かされ続けてきた各星座の解説を改めて聞かされ挙句、施設を出る頃にはまた改めて忘れさせてくれるという奇特な場所でもある。帰り際、特典として貰える首の痛みで得をするのは接骨院ぐらいのもの。痛みは丸一日続く。
スポーツ観戦
片方だけが自己満足に浸れるスペシャルなスポット。興味のない人間にとってこれほど苦痛な場所もない。ルールを説明しているうちに会話の全てが終了し、その間は試合を見ることもままならない。「今、どっちに点入ったの?」幾度となく繰り返されるこの質問の先にあるのは、間違いなくスリーアウトチェンジだ。
ドライブ
道に迷いしカップル達がさらに道に迷うためのスポット。運転がヘタ。助手席なのに何もしない。車内が臭い。トイレ行きたいのに大渋滞…等々。イライラする話題には事欠かない。何気ない会話がケンカの引き金となり、何気ない沈黙が助手席を本格的な睡眠へといざなう。この異空間とともに、我々は一体どこに行こうとしているのであろうか?
お家デート
もっとも日本語としておかしなところがあるデートスポット。自宅は自宅だ。これを認めてしまうと、倦怠期の夫婦でも常にお家デートをしていることになるし、各々が楽しむ一人デートだって可能ということになる。やれることもゴロゴロしながらテレビやDVDを見ることぐらい。因みに結構な確率でどちらか一方は「早く帰れよ(帰りたい)」と思っている。
本来デートは楽しいものである。ここまで書いてきたことは、あくまで限界まで色を濃くした各デートスポットの負の側面だ。しかしながら誰にでも不測の事態はありえる。相手の気持ちや自分の性格を鑑みずに、無鉄砲にデートスポットを選べば、こうした負の側面が表れてくる可能性がグッと上がってくることは間違いない。
自分や相手の性格に合ってないものを絶対に選ぶなとまでは言わないが、少なくとも心遣い気遣いは必要だ。今回心を鬼にしてディスらせて貰ったのは、このような負の側面を理解した上でデートスポットを選んで貰いたかったからである。
と、もっともらしいことを言ってみたが、本当に書きたかったのはデートを楽しむカップル達への単なるひがみ。
すまなかった。