同社の製品に限らず、ノートパソコンをカフェで広げている人は、だいたい同じことをしているのにも関わらずである。
しかしながらこのロゴ、最初からこのようなシンプルなデザインではなかったとのこと。初めはニュートンが林檎の木を背もたれにして、本を読みふけっている絵をロゴデザインにしていたのだそうで、次の項で説明予定の元祖リンゴ野郎、ニュートンがここでも登場してくるあたりは流石の一言である。
ただ、ジョブズはこれでは伝わりづらいと判断し、かなり早い段階でデザインの変更を決定。結果、例のかじったリンゴのデザイン(当時はリンゴの色がカラフルなもの)になったため、その寿命は短かった。それでもリンゴそのものからは離れなかったところは、よほどの思い入れがあったということだろうか。
食べ物としてリンゴを、どこまで愛していたかは定かではないが、現代でリンゴといえば真っ先に思い付くのは、ほぼ間違いなくこのお方。現在のアップル社のリンゴが、メタル調であることから推測するに、ジョブズの歯茎は相当強かったと思われる。
アイザック・ニュートン
リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力の法則を思い付いた逸話で有名な彼。だが、実はこれは創作ではないかと言われていたりしていて、真偽のほどは定かではない。とはいえ、これだけ有名な話になってしまうと、この人をリンゴと関わりが深い人として、紹介しないわけにはいかないだろう。
また、多少物理をかじった人間でないと、「リンゴが落ちたのを見て何か法則を発見した人」程度の認識がほとんどな、知名度としては若干不遇の人でもある。 ちなみに、この時発見した『万有引力の法則』のアイデアについても、自然哲学者のロバート・フックと言う人と、どちらが先に思い付いたかモメていた。だが、このことも余り知られてはいない。
しかし、先に真偽不明のエピソードありきとはいえ、リンゴの知的なイメージをより強くしたという点では、この人の右に出る人間はいない。先に説明したジョブズに関連する逸話も、彼がいてこそである。
物理学学会の落し物係、アイザック・ニュートンをどうぞよろしく。
ウィリアム・テル
実在の人物であった証拠が現段階でないらしいが、スイスの英雄である。偉い人に頭を下げなかったからという理由で逮捕された際に、「息子の頭に乗せられたリンゴを見事射抜ければ、罪を許してやる」と言われ、見事射抜いた人物として日本でも広く知られている。
マジックショーなどで頭にリンゴを乗せるようになったのは、彼のエピソードの影響が強いと言われており、リンゴの的としての格好よさの始祖であるとも言える。今でもリンゴは、そうした芸を行う際の標的として世界中で大人気だ。
もし、あの時的として選ばれたのがパンとかであったら、今日までの的としての活躍はなかったかもしれない。
この痛そうな状況が、リンゴ側にとって嬉しいものなのかはどうかは分からないが……
リンゴ・スター
言わずと知れたビートルズのドラマーである。同グループのまとめ役として知られ、もし彼がいなければ、「ビートルズはもっと早くに解散していたのではないか?」とまで言われている。日本では1996年に宝酒造のすりおろしリンゴのCMに出演しており、「りんご すった―」と、自身の名前とかけたセリフをいうなど話題になった。
だが、実はこれは芸名で、本名はリチャード・スターキーと言うそうである。また、芸名としてつけたリンゴの由来も日本の林檎とは無関係とのこと。ハリケーンというグループにいた時代に指輪を沢山はめていたことで、RINGS(リングス)と呼ばれていたことに由来するらしい。
同じくリンゴがつく芸名で活動している日本の歌手に椎名林檎がいるが、彼女の場合は果物の林檎の意味で芸名に使っており、子供の頃に赤面してしまう姿を「林檎、林檎」とからかわれたことに由来している。
今回紹介したリンゴに関わる有名人の中では、唯一果物の林檎とは実は全く関係なかった人物であるが、世界的にリンゴのつく名前と言われれば、このリンゴ・スターだ。さらには、こんなにも関係のない由来であったのにも関わらず、ビートルズの事務所の名前はアップル。
こちらは、命名の諸説にリンゴ・スターがいたからアップルと名付けられたとする説(余り有力ではない)が存在しているが、偶然と言うのは恐ろしい。知らない間にリンゴの持つ愛らしいイメージを利用していた点では、上記の三名と比べても特筆すべきものがあるだろう。
全然日本語でいうリンゴとは、関係ないところから付いた名前だったのに、CMまで出てしまったのだから。
梨の立場はどうなる?
表現的な場面で使用される現代のリンゴの魅力は、彼らのような偉大な人物達によって作り上げられてきたと言っても過言ではないだろう。果物の中でリンゴと同じようなイメージを与えているものは、それほど多くはない。
姿形がそっくりな梨の心中には察するにあまりあるものがあるが、こうして偉人たちを並べてみると、現在のリンゴが持っているイメージを上回る果物は当分出てこなそうである。
そんなわけで、引き続き梨は偉人たちのイメージ付けには『ヨウナシ』の状況が続く見込み(ごめん)。あれこれと忙しそうな偉人たちとうまく付き合っていくには、皮ごと食べられるリンゴの利便性がやはり必要不可欠なのである。