【福利厚生制度】
年次有給休暇・夏季休暇・年末年始休暇
こうして書かれると、パッと見では年次有給休暇とは別に、夏季休暇と年末年始休暇が定められていると誰もが思うに違いない。しかし実際は、『年次有給休暇計画的付与制度を利用した有給休暇の取得だった』ということが、この表記の場合本当によくあるのだ(注)。
社会人経験をした人間ならまだしも、初めて企業に就職する学生に、このような表記がされた福利厚生の中身を正しく見極めろ、というのは随分と酷な話である。
編集注:このような表記であっても、きちんと特別休暇として取得させている企業も数多く存在する
【求人票は広告!?】
求人票は実際に雇用契約を結ぶ前の広告のようなものという側面が大きい。それゆえに「嘘、大げさ、紛らわしい」の表記には注意が必要だ。
もちろん、年次有給休暇計画的付与制度による、夏季休暇の取得、年末年始休暇の取得、そのものを批判するつもりはない。ただ、本来法律によって当然に与えられている年次有給休暇の取得を、さも会社が独自に定めた特別な休暇のように取り扱うのは、おかしな話だと言っているだけである。
表記の曖昧な会社になると、結婚休暇、バースデー休暇、家族旅行休暇といった、どう見ても特別休暇に見えるものまで、単なる有給休暇の取得だったというケースもある。これでは労働者の当然の権利である有給の取得が、まるで会社からのご褒美のようだ。
このような誤認を呼ぶような表記のおかげで一番迷惑を被っているのは、福利厚生の一環として『本当に』特別な休暇日を設けているところだろう。
そのため、『本当に』特別休暇を設けている企業の中には、このような注意書きを追加するところが現在では増えてきている。
【福利厚生制度】
年次有給休暇・夏季休暇(※)・年末年始休暇(※)
※年次有給休暇とは別に会社が定める特別休暇
だが、福利厚生制度の趣旨から言えば、本来、年次有給休暇計画的付与制度を利用している側がこう書くのが筋だろう。
【福利厚生制度】
年次有給休暇・夏季休暇(※)・年末年始休暇(※)
※年次有給休暇を消化して休暇を取得。
そもそも年次有給休暇を、福利厚生制度の項目に書くこと自体が、ちょっと違う気がしないでもないが、これならまだ理解できる。ただし、年次有給休暇計画的付与制度を利用している企業で、こうした正しい表記を行っている企業はかなり少ない。
全く同じ年収で、全く同じような業務内容であれば、普通は休日の総数が多い方を選ぶだろう。これは相当大事な問題なはずだ。下手をすると、突然病気になって長期の入院を与儀なくされた時は、年次有給休暇が残っていないなんてこともありうる。
その場合、福利厚生制度の表記を誤認して入った入社した人は、夏季休暇のために使ったのが5日なら、5日分の給与を損したことになる。日給換算15000円で働いていたとしたら、合計で75000円の損だ。
就職活動生(転職者も)は、この部分についてしっかりと確認をしておいた方が良いだろう。誤認して就職してしまった場合、ここで例に挙げた以外にも様々な不測の事態が起こる可能性がある。
・入社6か月経過後に有給休暇を付与する会社の場合、初年度は夏季休暇なしもありうる。
・病気やケガで有給休暇を使い切ってしまい、年末年始休暇が取れない(特に総有給数が少ない初年度に起こりやすい)。
・入社前の説明会で言われた「ウチの会社は有給消化率高いよ」につられて入試したが、社員の有給消化は全て夏季休暇と年次有給休暇だった。
無論、『年次有給休暇計画的付与制度を使っての夏季休暇や年末年始休暇取得』という点を、理解した上での入社であるのであれば、何ら問題はない。世の中には、土日や祝日が通常の休日でない会社も沢山ある。休日数が会社や業態によって異なるのは当たり前の話だ。純粋に休日が多いと見せかけて、誤認によって求人票の広告効果をあげようという手法が頂けないだけである。
ただ、現実問題として、最初に一例として挙げた
【福利厚生制度】
年次有給休暇・夏季休暇・年末年始休暇
のような表記で、本当の意味での特別休暇なのか、そうでないのかを見分けるのは難しい。
本当の意味で表記している企業も数ある中で、逆の意味で誤認してしまうのは非常に勿体ないことだ。従業員のためを思い、福利厚生制度として設立した企業にとってもデメリットでしかない。
しかしながら、これに関してはもう直接聞いて確かめるしかないのが現状だ。就活生が面接受ける際に福利厚生についての質問をするのは、いささか憚られる部分があるかもしれないが、聞かずに後悔するよりはマシである。
面接の評価が悪くなるのが怖ければ、説明会で聞いてもいいし、直接人事に問い合わせても良いだろう。それも怖ければ一番おすすめなのが、取りあえず内定を取ってから尋ねてみることだ。
「今、複数社から内定を頂いてまして、どの会社に入社するか精査しています」とでも前置きしてから聞いてみれば良い。内定さえ取っていればこっちのものだ。おかしく感じたら、内定を断ってしまえば良いのである。
会社に入るということは、自分の生き方を決めるということでもある。人生の中でプライベートな時間をより大切にしたいという希望があるなら、休日というファクターは非常に重要だ。その重要な部分を決してないがしろにしてはいけない。
後々の後悔を生む可能性を少しでも排除したいのであれば、この問題に関わらず確認することが第一だ。
本稿を読んだことで、貴殿の就職活動が実りあるものになることを、心より祈っている。
頑張ってくれ。