夢売る二人
夫婦で経営する居酒屋を火事で失うところから物語は始まる。もう一度店を持ちたい。そんな思いが夫婦を独身女性を騙す結婚詐欺の道へといざなう。主演は松たか子と阿部サダヲ。本作は詐欺の手口を楽しむ作品というよりは、れっきとした夫婦でありながら、夫が結婚詐欺をしているという微妙な夫婦関係を楽しむ映画だ。
あと、保険業界の関係者であれば、「きちんとした保険に入っておけばこんなことにならなかったのに……」と思ってしまう作品でもある点も付け加えておこう。保険はめちゃめちゃ大事。
ソドムの林檎~ロトを殺した娘たち
実際に日本で起きた『首都圏連続不審死事件』を下敷きにした。怖すぎる女結婚詐欺師の物語。映画ではなく、全4回の連続ドラマである。通常、結婚詐欺は命までは奪われることはない。金と心を奪われるだけだ。だが、この作品では金も心も命も奪われてしまう。
主演は寺島しのぶ。一流の女優さんに対してこんな失礼な言い回しはナシなのかもしれないが、彼女がする、いわゆる『モテるブス』の演技は秀逸。よっぽどの面食いでなければ、「寂しい時だったら俺も騙されるかも……」と思ってしまってもおかしくはない。名作揃いだと言われるWOWOWの連続ドラマWの中でも、頭が一つ抜けた感のある名作である。
結婚詐欺はなくならない…
2016年8月27日に同じく結婚詐欺師を主人公にした映画『後妻業の女』も公開された。主演は大竹しのぶ。こちらは厳密には結婚詐欺というよりは、遺産目当ての結婚という印象であるが、そこに愛がないのであれば、結婚詐欺師の定義に当てはまるだろう。
それぞれの作品を見て頂ければお分かり頂けるかと思うが、結婚詐欺という犯罪は、途中までは全く気付かず、時には被害者に満足感さえ与えてくれる犯罪なのである。それだけに、いつまで経っても被害者は絶えない。他のジャンルの詐欺は、時代と共に少なからず変化をしていっているのにも関わらず、この結婚詐欺だけは、根本が全く変わらないままだ。
恐らく、他の全ての詐欺が消えたとしても、この結婚詐欺だけはなくならない。人の一番大切な『愛』の部分に手を出す犯罪だからだ。もしかしたら、明日貴方を騙そうとしているアカサギが、声をかけてくるかもしれない。その時は少しだけこの3作品を思い出して、客観的に自分を見るようにすると良いだろう。
次の結婚詐欺モノのモデルになってしまわないためには、その心がけが大切だ。ただ、どの作品でも描かれている「好きになっちゃったらしょうがない」の気持ちは、どう予防したところで、結婚詐欺に遭う可能性が誰にでもあることを示唆しているような気がする。