1.入浴後すぐに外出してはいけない
汗っかきにとって入浴は欠かせない行為だ。人より小まめに体を洗い流さねば、たちまち汗の匂いは体にこびりつき、人は近寄らなくなっていく。ひどい場合だと自分でも自分の匂いがイヤになるほどだ。
それだけに、この入浴という行為に必ず付随する汗の問題は悩ましい。汗を流したくて入った風呂のせいで、さらに汗がながれるという悪循環に陥ることも日常茶飯事だ。特に入浴後すぐの外出は頂けない。
体温が高ぶっている状態を保持しつつ暑い外に出れば、あっという間にシャワーを浴びたような滝汗が吹きでることになる。微量でも水分を帯びた肌はさらなる湿気を生む。体をバスタオルで丁寧に吹き取り、空調に当たるなどして、完璧に体を乾かし体温を正常に戻す必要がある。
また、体を洗う際に多少運動に近い行為をしているので、その面でも体を落ち着かせる時間がいる。外出前に入浴の必要がある時は十分な時間を確保すること。最低でも入浴終了後30分は確保したいところだ。入浴後すぐにが外出することは、汗っかきにとって、サウナスーツを着て炎天下に飛び出るのと同じことだといえる。
風呂に入ったらすぐには外出するな。湯船には浸かっていないとか、そういう問題じゃない。
2.灰色の服を着て外出してはいけない
汗っかきなら誰でも一度は経験したであろうミスだが、人は何度もミスを繰り返す生き物だ。ベテランの汗っかきでも、外に出た状態で初めて気が付くというパターンは非常に多い。家もユニクロも遠い位置で、その事実に気が付いても後の祭りだ。
着てきた灰色がシャツならまだ救いがあるが、ズボンだともう目も当てられない状況になる。業界ではこの系統の服を『灰色の悪魔』と呼んでいる。汗が染みて浮き出した黒い模様が、さながら悪魔のように見えるからだ。
私達、尋常じゃない汗っかきの汗は止まらない。そういう星の下に生まれたのだから仕方ない。だが、隠せるところは出来るだけ隠した方がいい。浮き出した悪魔の姿を気にすると、それはそれで、焦ってさらなる汗をかくことになる。
隠せるところは出来るだけ隠そう。というか、あえて汗をアピールするような真似はよそう。君が無意識に灰色の服を手にとった時、悪魔はすぐ傍で微笑んでいる。っていうか、尋常じゃない汗っかきを自負しているなら、灰色の服は買わないぐらいの気持ちでいて欲しい。
3.薄手のハンカチのみで外出してはいけない
ハンカチは汗っかきにとってマストアイテムだ。そこを否定するつもりはさらさらない。だが、それ一本で汗に立ち向かおうとするのは愚行の骨頂だ。スーツに響かないように、ポケットには薄手のものを……なんて甘い考えも早急に捨てた方がいい。君は自分の汗の量を過小評価している。
通常のハンカチなら良く持って5拭い。時間にすれば外出後わずか30分ほどで、効果が全くないただの濡れた布切れになる。汗まみれの布で汗を拭いても汗を拭ったことにはならない。しかも、折りたたんで拭くと若干吸水力が落ちるので、広げてから拭うことになり、すぐにグチャグチャになってしまう。
最低でもミニタオルは携帯しておきたい。ただ、これも譲りに譲ってという最低ラインだ。鞄などを持ち歩ける状態なら、中にハンドタオルを入れておき、かつ替えのミニタオルも用意しておくぐらいの対応は必要だろう。
特に見てくれを気にしなくて良い状況なら、バスタオルを首に下げてスポーツマンを気取る携帯の仕方もアリだ。
ハンカチだけじゃ
絶対ムリ
4.夜更かし(徹夜)をしてはいけない
夜更かしは様々な面で体のバランスを悪くする。徹夜明けなどはごく普通の人でも冷や汗をかくぐらいだ。汗っかきであれば、ことさらその症状が強く出てくる。睡眠不足で体を火照らせ、その状態で外を歩けば、結果は明白だ。
汗っかきにとって、熱帯夜は地獄のように寝苦しいが、何とか工夫して眠ろう。眠ることは冷静さを保つ意味でも大事だ。もろもろの禁止事項を守る上でも、冷静さは絶対に失ってはならない。
5.建物内で照明の近くに陣取ってはいけない
何とか口調の効いた建物に入った。汗っかきにとってはホッと胸を撫で下ろすことが出来る瞬間だろう。しかしながら、そこで安心してはならない。建物内の照明が暑いことがある。レストランなど、照明が頭に近い位置に設置されがちな場所では要注意だ。
座る席は照明から出来る限り遠ざかれる場所にし、ほんの少しでも暗がりを確保しよう。座高の高い人は、この禁止事項に特に気を付ける必要がある。周りが涼しい顔をしているのに、額から汗を流している人の多くはこのパターンが多い。建物ないだからと、油断していると手痛い目に遭うぞ。
6.食休みなしですぐに行動を起こしてはいけない
人間は飯を食うと汗をかく。大食い選手権などでは良く見る光景だ。温かい食べ物はもちろんだが、冷たいものでも汗をかく。食事もまた体温を上げる行為だからだ。
だから食休みをせず、体温があがった状態で外に出ると、これまた汗を多く流す原因となる。食事のあとは小休止を入れてから、次の行動を起こすようにしよう。
7.アルコールを飲み過ぎてはいけない
汗を掻いた後においしいビールやサワーを飲む。汗っかきにとっては、これ以上ない至福の時間だろう。また、あまり汗を掻かない人に何となく優越感を抱けるタイミングでもある。だが、調子に乗っての深酒は禁物だ。
アルコールは発汗作用があると言われているし、一時的に血行をよくして体温をあげるとも言われている。この点は入浴と同じように考えた方が良い。
そして、飲んでいる真っ最中より気を付けなければならない問題がある。それは二日酔いだ。ひどい二日酔いになると、気持ち悪さやだるさが原因で冷や汗が出てくる。一時の快楽に溺れて汗を誘発するような真似をしてはいけない。
汗のことで悩むあまり、ヤケ酒気味になり二日酔い、さらにまたヤケ酒では何の解決にもならない。お酒を飲むなとは言わないが、ほどほど留めよう。
8.早歩き小走りをしてはいけない
普通に歩いているだけでも汗っかきは汗をかく。だが、家に引きこもっている時以外では、移動という社会活動を捨てることは出来ない。運動をすると体温があがる。これは小学生でも知っているぐらい当たり前のことだが、これを必要最低限度に抑えよう。
汗をかくことが目的でない限り、汗っかきは避難訓練と同じく「おさない、かけない、はしらない」が基本だ。ちょっとしたことで焦って、運動量をあげてはいけない。目的地を目指す際には、ゆっくりと歩いても到着出来るぐらいの時間を確保しておこう。
思いっきり走って汗まみれになりながら目的地に到着し、建物内で一気に汗を引かせるという荒療治もなくはないが、あまりお勧めは出来ない。最近の空調は、私達の汗を一気に引かせるほどの温度ではないことが多いからだ。
【水分はしっかり取る】
いくら汗っかきが気になるからと言って、水分を補給しないのは絶対にNG。人一倍汗をかくのだから、人一倍水分補給をしよう。
9.トイレの個室に長時間滞在してはいけない
トイレの個室は密閉された空間だ。特別に空調などが整備されている場合を除いては、かなり気温が高くなっている。また、そこが『気張る必要がある場所』というのも、大量発汗を引き起こすひとつの要因だと言えるだろう。
少しでも発汗を抑えるために、さっさと出してさっさと出る。これは鉄則だ。
なお、稀に汗っかきの人の中に、トイレで汗を引かせてから外に出ようとする人がいるが、これはあまり意味がないので、止めておいた方がいい。
汗だくになっている姿を人に見られたくないが故の処理だろうが、ほとんどのトイレは個室の外の方が涼しいし、精神的にも開放的だ。のっぴきならない事情があるというなら話は別だが、出来れば、別の場所を選択した方がいいだろう。
10.汗をかいていることを気にし過ぎてはいけない
今まで様々な禁止事項を述べてきたが、この最後の10個目の禁止事項がもっとも大切だ。
私達、汗っかきが苦手としている言葉に「なんで汗掻いているの?」という言葉がある。もちろん、この言葉は単なる質問で、ほとんどの人が悪気があって言っているわけではないのは分かっている。
しかし、これを言われると、妙に出ている汗に意識が向いてしまい、そのせいでさらに汗が噴き出てくる。おそらく精神的なものだろう。ハッキリ言って、一番気になっていることを気にしないでいることは不可能に近い。だが、この問題こそが汗っかきを取り巻く問題の根幹をなしている部分だ。
言われれば言われるほど汗を掻いてしまい。その増えた汗が気になってさらにまた汗を掻く。
確かに汗だくなのは、周囲の人に迷惑をかけてしまうこともある。ある程度の気遣いと対策は必要不可欠だ。でも、だからといって、自分を追い込み過ぎる必要はない。そのせいで返って汗を掻いてしまう原因になっては元も子もないのだ。
1~9までの禁止事項は、こうした『汗っかきであることを気にし過ぎてしまう』瞬間を、少しでも少なくしようという趣旨で設けられた補助的な項目だとも言える。この10個目の禁止事項を守ることがもっとも重要だ。
汗っかきなことは決して悪いことではない。生まれ持ってきた体質に悩むことはあっても、それがすぐ絶望にはつながらない。戦い方はいくらでもある。~してはいけないと、制限ばかり設けてしまったが、あくまで大切なのは気にし過ぎない工夫をすることである。
ぶっちゃけ、こう語っている間も私は汗だくだ。だが、同じ汗っかきの同志達のために流した汗は美しいものだと信じている。
さあ、世の尋常じゃない汗っかき達よ。新しい扉を開ける時が来た。
それでは私はシャワーを浴びたいので、この辺りで失礼する。長文を読んで、そこの君もきっといい汗をかいたことだろう。
現役の尋常じゃない汗っかきより