受け答えが明るかった。プライベートでもスポーツやボランティア活動など活発に過ごしていた。等の理由をつけるにしても、顔が良ければ説得力があるみたいでしてね……
いやね。正直1回や2回の面接ぐらいじゃ分からないんですよ。見た目が一番分かりやすいんです。総合職に関してはそういう面がやや薄くはなるみたいですが、私が担当している事務職の採用はこんな感じで進んでいきます。
ただ、それでも、全員が全員ってレベルまではいっていないとは思います。受け答えがあまりにひどかったら、それは一応落としています。でも、今の人達って結構そこはしっかりしているので、そんなにひどい人っていないんですよね。
面接で差がつけにくいんです。だからこそ、顔が良いことが『上に推しやすい』大きな理由になってしまう部分があるのだと思います。
面接はそもそも第一印象が勝負を決める世界
[IT会社人材部 28歳男性]
あるかないかで言えば、ありますね。うちはそんなに大きくない会社なので、事務は派遣に任せて正社員は全て総合職です。私が面接するのも全て総合職採用になります。幅広い人材を取り入れたいと考えていますので、ほとんど書類選考で落とすことはありません。その代わり、私が担当するグループ面接で落としまくります。
一時間ほどの面接で5~6人を一気に振るいにかけるますので、第一印象が勝負です。そこの第一印象ではやはり顔が良いと有利です。イケメンの話は理論的に聞こえますし、可愛い子の話は丁寧に感じます。
この部分の差を埋めるのってかなり難しいんですよね。学歴や経歴が飛びぬけている。質問の受け答えが理路整然としているといった人材であれば、顔の問題は無関係になることもありえますが、第一印象のアドバンテージには絶対に越えられない壁がありますから。
同じくらいのレベルの人材であれば、当然選択は顔の良い方です。私もこの部署を任された時は正直自信があったんです。人の内面の能力を見分ける力に長けていると。
でも、選考を通過した履歴書に載っている顔写真を見て驚きました。全員ではないですが、偏っているんですよ。整った顔立ちの人達に。私もごく普通の人間だったってことでしょうね。気が付いた時には少しショックでしたけど、今は開き直ってしまいました。それも人間の魅力の一部分だと。
もしも芸能界を辞めた佐々木希が面接に来たら、誰だって通してしまうと思うんです。出来るだけ、公平な目で見たいとは思っていますが、第一印象だけはどうしようもないですからね。立ち振る舞いを美しくすれば、印象はある程度良くできるのかもしれませんが、素材の違いにはなかなか敵わないと思います。そんなことはないって言う人はただの嘘つきですね。
容姿と性格のバランスで決めることはある
[アパレル会社人事部 33歳女性]
私は販売員の採用面接を担当しています。世間で使われている顔採用の意味とは違うかもしれませんが、私どもの会社でも少しだけありますね。
女性向けアパレル販売員の世界は絶対的な女社会です。業務上での能力に加えて、女社会ならではの人間関係の調整能力が求められます。いくら業務上の能力があっても人間関係がうまくいかないと、皆さんすぐに辞めていってしまうんです。
お恥ずかしい話ですが、私どもの会社では管理部門としてこの人間関係の部分での統制というのが、非常に難しい状況があります。個々の現場の状況をこと細かに把握することが出来ていないのです。情報として入ってくるには入ってくるのですが、本当にそれだけを元に判断を下して良いのか迷ってしまうところがあります。
採用に関しては、そうした中途半端な情報を元に、採用の可否と配属先を決めることになります。それだけにいくら詳細に分析をしたつもりでも、どうしてもミスマッチが起こり易くなるのです。
ミスマッチが起きて早々に退職されてしまうと、当然私達人事部の評価が下がってしまいますので、改善をすべく、また新たな採用方針を打ち出していくわけですが、この部分に容姿の要素が少しだけ関わっています。
容姿が良い……だけで通すことはありません。また、容姿が悪い……だけで通さないこともありません。ただ、容姿と性格のバランスが、配属予定先の風土(情報を元に分析した)に合っているかで、採用を決めることはままあります。
美人でサバサバしているタイプを、同じようにサバサバしているリーダ格がいる店舗には採用しません。この場合は容姿が悪くても素直で明るいタイプを採用したりします。
今は新卒などの大量採用を控えて、店舗基準で採用活動を中心に行っていますので、面接が定期的にあって仕事は大変ですが、これがうまく機能しています。
顔採用だけではありませんが、そのバランスを含めて判断を下すことはあるということです。
悲しい話ですけど、結局は現場のリーダー格が気に入るか、気に入らないかってところが大きいのが私どもの会社です。私も販売員の経験があるので、この現実路線は仕方ないと思っています。
女性だらけの社会って、容姿を含めて合うか合わないかが大きいと思うんです。本当は能力だけで決めたいんですけど、『辞めなそう』っていうのも評価に値する能力の一つですから。でも、このままでいいのかな?とは危機感を持っています。
顔採用は確かにあるが、顔が良いだけで勝ち組になれるわけではない
若手採用担当者による、『顔採用』についての非常に生々しい声であった。意見を総合するに、顔採用はやはり存在するとの結論を出すのが妥当と言えそうであるが、それが生まれた時から勝ち組のレベルにまで達しているとまでは言えなそうである。
生まれ持って与えられた条件に有利不利はつきものだ。容姿が良い、顔が良いというのは大変に有利ではあっても、単純にそれだけで勝負が確定的になることは稀だろう。
無論、会社のシステムとして、人間の本能として、顔採用の側面が日本の就職戦線に存在していることは否定できない。
しかし、それゆえに採用側にもそれぞれに苦悩が感じられた。また、採用担当者個人が顔採用を、推進しているわけではない点についても留意する必要があるだろう。
とどのつまりは、生まれ持った瞬間に与えられたカードでどう勝負していくかが、人間にとって重要なのではないだろうか?たとえ、イケメン、可愛い、などの強いカードを持っていなくても、他の手持ちのカードを強化すれば、勝負になることもあるはずだ。
とはいえ、やっぱり羨ましいものは、羨ましい。何故、神様は一番欲しいカードを配ってくれなかったのだろうか?と不満を漏らしたくなる気持ちは本当に良くわかる。
もしかしたら横行する顔採用の正体は、この『顔が良いカード』に対する強い憧れなのかもしれない。